認知症では、物忘れや思い込み妄想など、様々な症状が現れますが、時に怒りっぽくなることがあります。
それまで温厚な人だった場合、周りの人は戸惑うかもしれませんが、これは決して珍しいことではありません。
このようなとき間違った対応をとると、認知症の進行を進めることにもなりかねませんので注意が必要です。
認知症で怒りっぽくなる原因
脳の機能障害で人格が変わる
人間は普段理性によってある程度感情をコントロールしていますが、認知症により脳の組織が損傷することで自分の感情をうまく抑えることができなくなり、怒るようになります。
思うように対応できない自分にイライラして怒る
認知症になり、今までできたことができなくなったり、この先自分がどうなるのかという不安がつのることで感情が不安定になり怒りっぽくなります。
認知症の症状として怒る
認知症の中でも、アルツハイマー病の初期症状である物盗られ妄想では、常に身近な人を疑って、怒りっぽくなる場合があります。
また、前頭側頭型認知症(ピック病)では理性的な行動をとる機能を担う前頭葉や、言葉を理解できる側頭葉が萎縮することにより、怒ることが増えます。
もう一つ、レビー小体型認知症では、実際にはないものが見えてしまう幻視という症状により怒りっぽくなることがあります。
その他の認知症の初期症状
認知症の初期症状として、他に、次のような症状があります。
・物忘れがひどくなり、同じことを何度も言う
・日付や場所がわからなくなる
・今までできていたことができなくなり、失敗が増える
・身なりに気を使わなくなる
怒りっぽくなっただけでなく、以上のような症状が見られたら、認知症を疑い早めに治療を開始しましょう。
怒っている時の対応
怒られれば誰もが嫌な気持ちになりますが、適切な対応をとることで本人が落ち着けば、お互いに冷静になることができます。
そのためには、何より周囲の人が怒らないことが大切です。
怒るのは認知症の症状だということを理解し、感情的にならずに常に味方であるということを伝えるようにしましょう。
たとえ、理不尽な理由で怒っているように見えても、間違いを正すことは逆効果です。
それよりも、ときに同調したり感情を共有し安心感を抱かせることが大切です。
頭ではわかっていてもうまく対応できない時もあるかもしれませんが、そんな時は少し席を離れたり、タイミングを見て話題を変えるのも、いい方法です。
認知症は、投薬での治療が中心となりますが、身近な周囲の人の穏やかな対応が本人の精神的な安定につながります。
公的なサービスも上手に利用しながら、お互いに無理のない生活が送れるようにしましょう。