「紅葉狩り」という言葉がありますが、紅葉(もみじ)は葉っぱで食べられません。
「いちご狩り」「きのこ狩り」のように、通常は食べられるものを採りに行くときに使われる言葉です。
「紅葉狩り」がなぜ紅葉見物、紅葉観賞といわず「狩り」というようになったか、言葉の意味や由来を調べてみました。
紅葉狩りの言葉の意味や由来は?
現代の社会では山や公園の紅葉の枝をぼきっと手折って観賞するというのはしてはならないことですが、大昔の貴族たちは自分の庭の草花を手折って室内に持ち込み、風流を楽しんでいたようです。
その頃の言葉が残り紅葉を楽しむことを「紅葉狩り」と呼んでいます。
昔は手折ったものを室内で楽しんだのかもしれませんが、現代では紅葉のたくさんある山や公園の名所に行って紅葉を楽しみますよね。
言葉だけがそのまま残り、住まいの変化とともに紅葉の楽しみ方が変わったのかもしれないです。
紅葉は室内で観賞できるの?
紅葉は葉っぱですが、秋の生け花の素材として利用されることもあるようです。
しかし同じ木の枝でも梅、桃のように、水揚げのよい素材ではないです。
花屋さんで季節になると梅、桃の生け花用の枝は見かけますが、紅葉の枝はあまり見かけません。
もし紅葉がもっと水揚げのよい素材だったら、秋の花屋さんで見かけるのかもしれません。
紅葉は屋外で散りゆくはかなさを楽しむべきもののようです。
「紅葉狩り」という演目の能、歌舞伎はどんなもの?
日本の古い伝統芸能である能、歌舞伎に「紅葉狩り」という演目があります。
能とは室町時代に世阿弥観阿弥が大成させた謡と舞によるおごそかな雰囲気のものです。
歌舞伎は江戸時代に人気のあった劇で、能の「紅葉狩」が歌舞伎の「紅葉狩り」としてアレンジされています。
歌と舞だけの能よりも歌舞伎の「紅葉狩り」の方が現代の劇に近くなっています。
劇の主人公は、平安時代の武将、平維茂(たいらのこれもち)です。
信州戸隠に紅葉狩りに行ったときのお話なのがタイトルの由来です。
戸隠で姫にお酒を飲まされた維茂は酒に酔って眠ってしまいます。
姫は鬼女に正体をかえ、維茂を襲いました。
維茂は小烏丸という名刀を持っていたため鬼姫をやっつけて助かりました、というお話です。
扇を両手に2枚もった姫の華やかな舞と、恐ろしい顔立ちの鬼女をひとりの人が演じるギャップが見所になっています。
紅葉の季節にはこの紅葉狩りという歌舞伎の演目が上演され人気になっているようです。
紅葉狩りの意味や由来についてのまとめ
昔の貴族が自分の庭の草花や紅葉を手折って観賞したのが紅葉狩りの言葉の由来で、山や公園の紅葉を見に行くようになった現代でもこの言葉が受け継がれています。
今は間近で紅葉の枝葉の様子を1本ずつ楽しむような方法でなく、紅葉狩りで有名な観光スポットに出向いてたくさんの紅葉の木が真っ赤に色づくのをシャワーを浴びるように楽しむ観賞の仕方になっています。
いちご狩り、きのこ狩りのような食べ物ではないものに「紅葉狩り」という言葉を使うことにギャップを感じるのは、この言葉ができた当時の平安時代と紅葉狩りのやり方が大きく変わってきたからなのかもしれません。